固体の変形① 応力とひずみ、弾性定数―言葉の意味
応力
応力(stress)は、ある固体に働く圧力のようなものである。式もそんな感じ。ちなみに圧力というのは気体や液体に対して主に使う言葉で、応力は固体について主に使う言葉と思っておけば良い。単位は[Pa]。
面に垂直に働く応力を垂直応力または法線応力という。これはさらに引張応力と圧縮応力に分けられる。要は引っ張ったり押しつぶしたりしたときにかかる応力のことである。記号では、よく$σ$で表される。
対して、面の接線方向に働く応力のことを接線応力またはせん断応力またはずれ応力と呼ぶ。意味は名前通りである。記号は$τ$。
応力の式
垂直応力$σ$や接線応力$τ$は、以下の式で定義される。
$$\underset{\mbox{垂直・接線応力}}{σ,τ} = \frac{F_\mbox{力}}{S_\mbox{断面積}}$$
なお、当然だが、力が斜め方向に加わっている場合、力は三角関数を用いて分解しなくてはならない。
ひずみ
ひずみは、物体の変形の割合のことである。無次元量。
伸びひずみ$\epsilon$
伸びひずみ$\epsilon$は以下の式で表される。
$$\epsilon = \frac{\delta L}{L}$$
$\epsilon > 0$なら伸び変形、$\epsilon < 0$なら縮み変形であることが式からわかる。
せん断ひずみ$\gamma$
せん断ひずみ$\gamma$は、例えば直方体のようなものが平行六面体になるような変形のこと。
せん断ひずみ$\gamma$は、以下の式で表される。
$$\gamma = \frac{\delta L}{L} = \tan{\theta}$$
ただし、$L$はある辺の長さを示し、$\delta L$はその辺の移動距離を示す。また、$\theta$は変形した角度を示す。後で図を作ります。
体積ひずみ$\Delta$
体積ひずみ$\Delta$は、すべての面に一様な法線圧力$σ$がかかった場合のひずみである。例えば深海に物体を入れたときにかかった水圧によるひずみである。
体積ひずみ$\Delta$は、以下の式で表される。
$$\Delta = \frac{\delta V}{V}$$
ポアソン比$\nu$
ポアソン比$\nu$とは、軸方向のひずみ$\frac{\delta L}{L}$と直径方向のひずみ$\frac{\delta d}{d}$の比のこと。
例えば円柱状の棒を引っ張って伸ばすと、半径は小さくはずである。逆もまた然りで、圧縮して縮めると、半径は大きくなるはずである。
$$\underset{ポァソン比}{\nu} = - \frac{ \frac{ \delta d}{d}}{ \frac{ \delta L}{L}}$$
ポアソン比$\nu$は、$0<\nu\leq 0.5$の範囲を取り、物質に固有の値である。
ポアソン比$\nu=0.5$ならば、いくら伸ばせど縮めど体積は変わらない。
ポアソン比が小さいほど、体積が小さくなる。
物質 | 理想* | ゴム | 金 | SUS304 | クラウンガラス |
---|---|---|---|---|---|
ポアソン比 | 0.50 | 0.46~0.49 | 0.44 | 0.29 | 0.22 |
*「理想」とは、いくら引っ張ったり縮めたりしても体積が変わらない理想的な物質のこと。
ヤング率$E$ - 引張
フックの法則によれば、応力$σ$とひずみ$\frac{\delta L}{L}$は比例する。ただし、比例限界内であればの話$\cdots$。
引張応力$σ$について、フックの法則は
$$σ = E\cdot\epsilon = E \cdot \frac{\delta L}{L}$$
このときの比例定数$E$を、ヤング率と呼ぶ。単位は[Pa]。
式から分かる通り、ヤング率が大きいほどひずみが小さい=硬い材料ということになる。
逆に、ヤング率が小さいほどひずみが大きい=簡単に伸ばせる柔らかい物質である。
物質 | 剛体 | ゴム | 金 | SUS304 | クラウンガラス |
---|---|---|---|---|---|
ヤング率[GPa] | $\infty$ | $3.0\times 10^{-3}$ | 78 | 193 | 71.3 |
なお、ある力を加えたときの伸びや縮みを知りたければ、式変形して$\delta L = \frac{σL}{E}$とすればよい。$\delta L$は伸びや縮みを示しているからね。
剛性率$G$ - せん断
せん断応力$τ$によってせん断ひずみ$\gamma$が生ずる場合のフックの法則は
$$τ=G\cdot \gamma = G\cdot \tan{\theta}$$
このときの比例定数$G$を、剛性率またはずれ弾性率と呼ぶ。単位は[Pa]。
ヤング率$E$に比して剛性率$G$の方が低い傾向にあるので、多くの物質はせん断応力に弱いってことです。
物質 | 剛体 | ゴム | 金 | SUS304 | クラウンガラス |
---|---|---|---|---|---|
剛性率[GPa] | $\infty$ | $1.0\times 10^{-3}$ | 27 | 74 | 29.2 |
体積弾性率$K$
一様な圧縮応力$σ$によって体積ひずみ$\Delta$が生じる場合のフックの法則は
$$σ = -K\cdot\Delta = -K\cdot\frac{\delta V}{V}$$
このときの比例定数$K$を、体積弾性率という。単位は[Pa]。
また、体積弾性率の逆数$\frac{1}{K}$を、圧縮率と呼ぶ。
物質 | 剛体 | ゴム | 金 | SUS304 | クラウンガラス |
---|---|---|---|---|---|
体積弾性率[GPa] | $\infty$ | - | 217 | 134 | 41.2 |
弾性定数間の関係
頑張って計算すると、以下のようになる。
$$\begin{eqnarray} \nu &=& \frac{3K-2G}{6K+2G} \\ E &=& \frac{9KG}{3K+G} \\ G &=& \frac{E}{2(1+\nu)} \\ K &=& \frac{E}{3(1-2\nu)} \end{eqnarray}$$
多分こんなの覚えなくてよいと思う。関係式で表されるんだよ~ってのを知っておけばよいだろう。