ベクトル空間①
注意:この記事は執筆中です。
はじめに
大学の線形代数学で扱うベクトルは、高校の時のように有向線分で表されるようなものではありません。
すなわち、向きと大きさを持った値、などというある意味曖昧な定義をしているわけではありません。
ベクトルは、ベクトル空間の元と定義されています。
この、幾何学的でない抽象的なベクトルに慣れることが、大学線形代数学の最初のハードルかもしれません。
ベクトル空間とは
ベクトルを元とする空間!
具体的に言えば、①すべてのベクトル同士の和が一意に定まって、②定数倍も一意に定まって、③演算ができる。
厳密に書けば、
①すべての$\boldsymbol{x}, \boldsymbol{y} \in V$に対し、和$\boldsymbol{x}+\boldsymbol{y}\in V$が一意に定まる。
②すべての$k \in \mathbb{R}, \boldsymbol{x} \in V$に対し、実数倍$k\boldsymbol{x} \in V$が一意に定まる。
③Vの任意の元に対して、ベクトル演算が可能である。
こういう空間$V$を、ベクトル空間と呼びます。
では、ベクトル演算とは何でしょう?難しいことはありません。
以下では、$\boldsymbol{x}, \boldsymbol{y}, \boldsymbol{z}$をベクトル空間$V$の任意の元(すなわちベクトル)、$k, l$を実数とします。
ベクトルの演算
結合法則
$$\left( \boldsymbol{x} + \boldsymbol{y} \right) + \boldsymbol{z} = \boldsymbol{x} + \left( \boldsymbol{y} + \boldsymbol{z} \right)$$
加法の交換法則
$$\boldsymbol{x} + \boldsymbol{y} = \boldsymbol{y} + \boldsymbol{x}$$
零ベクトルの存在
$$\boldsymbol{x} + \boldsymbol{0} = \boldsymbol{x}$$
逆ベクトルの存在
$$\boldsymbol{x} + \left( - \boldsymbol{x} \right) = \boldsymbol{0}$$
分配法則①
$$(k+l)\boldsymbol{x} = k\boldsymbol{x} + l\boldsymbol{x}$$
分配法則②
$$k(\boldsymbol{x}+\boldsymbol{y}) = k\boldsymbol{x} + k\boldsymbol{y}$$
乗法の交換法則
$$k(l\boldsymbol{x}) = (kl)\boldsymbol{x}$$
1倍すると元のベクトルを示す
$$1 \cdot \boldsymbol{x} = \boldsymbol{x}$$